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2022.02.01 プレスリリース

アクセリード、東京医科歯科大学との急性期脳梗塞及び蘇生後脳症のmRNA医薬品開発に関する共同研究を開始

この度、アクセリード株式会社(代表取締役社⾧:藤澤朋行/以下、アクセリード)は、国立大学法人 東京医科歯科大学(学長:田中 雄二郎/以下、「TMDU」)、急性期脳梗塞及び蘇生後脳症(以下「虚血性中枢神経疾患」)を対象とした脳由来神経栄養因子(以下「BDNF」)メッセンジャーRNA(mRNA)治療薬の開発にむけた共同研究契約を締結致しました。今後アクセリードとTMDU生体材料機能医学分野は、動物モデルでの検証実験を行い、BDNF mRNA医薬品候補化合物を取得することを目指します。BDNF mRNA医薬品は、極めて高い医療ニーズを抱える虚血性中枢神経疾患に対して、世界初の根治療法の提供を可能にすると期待しています。

【背景】

脳卒中は全世界で死亡原因の第2位を占め、毎年約1,300万例の発症数と550万例の死亡数があり、日本でも年間100万例以上の発症数と約6万例の死亡例がある極めて医療ニーズの高い疾患です。本共同研究で対象とする疾患は、脳卒中患者の過半数を占める虚血性中枢神経疾患であり、血流低下による神経細胞死が原因で神経機能障害をきたす疾患です。本疾患に対する現在の治療薬は神経細胞傷害のダメージを抑制する対症療法に限られており、本共同研究で目指している、神経細胞の生存や増殖、さらには、機能賦活化を作用メカニズムとする根治療法は存在しません。

本共同研究で対象とするBDNFは、人類を含め幅広い生物の体内で産生される液性タンパク質であり、ヒトBDNFは30年以上前に発見されています。これまで臨床研究も含め様々な研究成果からBDNFは神経細胞の生存・成長・シナプスの機能亢進機能をもつことが明らかになっています。一方、BDNFタンパク製剤の臨床応用を試みた研究もありますが、血中安定性が極めて低いこと、神経細胞の存在する脳内へタンパク製剤をデリバリーすることが技術的に困難であったことなどから実現に至っていません。

mRNA医薬品は、mRNAをターゲット臓器にデリバリーすることで目的とする機能性タンパク質を発現させることが可能となる画期的な医薬品です。TMDU生体材料機能医学分野によるこれまでの研究成果から、BDNF mRNAを脳内に送達し、BDNFタンパク質を局所で発現させることで虚血障害による神経機能障害を改善する効果を動物モデルで確認できています(1)。本共同研究では、上記TMDUの研究成果を発展させ、医薬品の主要薬効成分となるBDNF mRNAの最適化、並びに、脳内へBDNF mRNAを送達する担体の最適化を行い医薬品候補化合物の取得を目指します。

【アクセリードの役割】

アクセリード傘下のARCALIS社は、国内の現状を打開する日本初のmRNA CDMOであり、原薬製造工場・製剤工場の設立を手掛けています。2021年5月に米国のmRNA医薬品・ワクチン製薬企業のArcturus Therapeutics Inc. と合弁で設立され、同社からの技術移管を受けて、2022年より国内でmRNA医薬品の原薬を提供していく予定です。

今回のプロジェクトは、このARCALIS社と、同じくアクセリード傘下のAxcelead DDPの知財・人材・設備を活用し、TMDUの位髙 啓史教授らにて検討してきているmRNA医薬品の送達技術に加えて、アクセリードから提供するmRNA配列やキャリアの検討を行うことで、安全かつ有効性の高い、医薬品に適したmRNA製剤の開発を進めます。

【研究者プロフィール】

位髙 啓史 (イタカ ケイジ) Keiji Itaka 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 生体材料機能医学分野 教授 ・研究領域 DDS(Drug Delivery System), 遺伝子治療、核酸医薬、バイオマテリアル

【参考文献】

(1)Fukushima Y, Uchida S, Imai H, Nakatomi H, Kataoka K, Saito N, Itaka K. Treatment of ischemic neuronal death by introducing brain-derived neurotrophic factor mRNA using polyplex nanomicelle. Biomaterials 270: 120681, 2021

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